とりあえずの収納グッズ購入が物の増殖を加速させてしまう理由
部屋を片付けようと決心したとき、多くの人が真っ先に向かうのがホームセンターや百円ショップの収納用品売り場です。SNSでおしゃれな収納術を見たり、雑誌でシンデレラフィットという言葉を目にしたりすると、自分も同じようにケースを揃えれば部屋がきれいになると思い込んでしまうからです。しかし、実はこれこそが片付けにおける最大の落とし穴であり、ごみ屋敷からの脱出を遠ざける危険な行動であることを知っておく必要があります。
なぜなら、収納グッズを買うという行為は、物を減らすという本来の目的をすり替え、物を詰め込むためのスペースを新たに作り出しているに過ぎないからです。空っぽの収納ケースが目の前にあると、人間は無意識のうちにそこを何かで埋めようとする心理が働きます。とりあえず散らかっているものを放り込んで蓋をしてしまえば、一時的には部屋が片付いたように見えますが、それは問題を見えなくしただけであり、解決したわけではありません。それどころか、収納スペースが増えたことで、まだ物が入るという安心感が生まれ、さらに新しい物を買い込んでしまうという悪循環に陥る可能性さえあります。
また、サイズや用途をよく考えずに買った収納グッズ自体が、やがて不用品となり、部屋を圧迫する原因になることも珍しくありません。プラスチック製の衣装ケースやカラーボックスは、一度買ってしまうと処分するのが面倒で、粗大ゴミとして出すのにお金も手間もかかります。中身が入ったまま放置され、開かずの箱と化した収納ケースが積み上げられている光景は、ごみ屋敷において非常に典型的なパターンです。つまり、物を減らす前に収納グッズを買うことは、火に油を注ぐようなものであり、自ら片付けのハードルを上げてしまっているのです。まずは、収納とは物を隠すための魔法の箱ではなく、管理するための道具であるという認識を持つことが大切です。
見えない場所に隠すだけの片付けは根本的な解決にはならない
隠す収納という言葉は聞こえが良いですが、ごみ屋敷に悩む人にとって、これはリバウンドへの片道切符になりかねません。散らかった部屋を手っ取り早くきれいに見せようとして、クローゼットや押し入れ、蓋付きのボックスに物を詰め込むだけの片付けは、いわば臭いものに蓋をする行為と同じです。視界から物が消えれば、一時的なストレスは軽減されるかもしれませんが、その代償として、自分が何をどれだけ持っているのかという全体像を把握することができなくなってしまいます。
見えない場所に押し込まれた物は、存在そのものを忘れ去られ、死蔵品となって家のスペースを占拠し続けます。例えば、洗剤のストックがあることを忘れて特売でまた買ってしまったり、奥の方にしまい込んだ洋服と同じようなデザインの服を新調してしまったりといった無駄な買い物が繰り返されることになります。こうして物は増え続け、やがて収納スペースから溢れ出し、再び床やテーブルの上を侵食し始めるのです。これが、多くの人が経験するリバウンドの正体です。
さらに、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた収納は、物の出し入れを困難にします。使いたい物を取り出すために、手前の物をどけなければならなかったり、どこに何があるか分からず探し回ったりするのは、日常生活において大きなストレスとなります。出しにくい物は、使い終わった後に元の場所に戻すのも面倒になるため、結局出しっぱなしになり、部屋はすぐに元の散らかった状態に戻ってしまいます。本当に使いやすい収納とは、どこに何があるかが一目で分かり、ワンアクションで出し入れできる状態のことです。隠すことに必死になるあまり、使いやすさを犠牲にしてしまっては本末転倒です。まずは、隠すのではなく、自分が管理できる量まで物を減らすことに全力を注ぐべきなのです。
正しい手順は減らすが先で収めるは最後という鉄則を守る
片付けを成功させるためには、守るべき正しい順序があります。それは、整理、収納、整頓というステップです。この中で最も重要であり、最初に取り組まなければならないのが整理、つまり不要な物を取り除き、自分にとって本当に必要な物だけを選び抜く作業です。収納グッズを買ったり、配置を考えたりするのは、この整理が完全に終わった後の話です。多くの人はこの順序を逆にしてしまい、要らない物まで一緒にきれいに収納しようとして失敗してしまいます。
まだ使えるから、もったいないからといって、判断を保留にしたまま収納グッズに頼ろうとするのは、ダイエットをせずに大きめの服を買って体型をごまかそうとするのと同じです。まずは、家中の引き出しや棚から全ての物を出し、一つ一つ手に取って要るか要らないかを判断してください。そして、不用品を徹底的に手放し、残った精鋭たちだけを前にして初めて、それらをどのように収めるのがベストかを考える段階に入ります。
驚くべきことに、徹底的に物を減らした後では、新たな収納グッズを買い足す必要がないことに気づくことがほとんどです。物が減れば、既存の備え付け収納や、今ある家具だけで十分に収まるようになるからです。むしろ、空いたスペースができて収納家具自体を減らすことができるかもしれません。もし、どうしても収納用品が必要になったとしても、その時には何をどこにどれだけ収めたいかが明確になっているため、サイズや形状で失敗することもありません。収納グッズは、あくまで最後に足りない部分を補うための補助的なアイテムです。この鉄則を胸に刻み、まずは何かを買うことよりも、手放すことから始めてみてください。そうすれば、リバウンドすることのない、本当に快適な空間を手に入れることができるはずです。